文学への招待 -英文学を一例に-

愛媛大学法文学部        教授 井上 彰 氏

 

【目的・要旨】

 文学とはどのような内容を扱う学問なのか、とくに英文学について解説し、生徒に英文学、と聞いて一般的には、イギリスやアメリカの、英語で著された文学作品を扱う学問として認識されているのではないだろうか。イギリスやアメリカなどの英語で書かれた文学作品に加えて、インドやカナダ、オーストラリアやニュージーランドの作品も扱う。また、実際には文学作品のみならず、英語という言語、英語が話される国々の文化、コミュニケーションなどをカバーしており、多くの大学ではこのように広く英語を中心とした幅広い事柄を扱っている。近年、「英文学」という学部や学科の看板から、「グローバル」、「国際」などのワードを使ってより詳細に特化した学部や学科を設置する大学が増えてきている。

県内では、国立の愛媛大学法文学部、私立の松山大学人文学部英語英米学科で英文学を専攻できる。英文学を専攻しようと考えている生徒は、国公立大学でも私立大学でも、どちらでも選択できるが、両者では学びの取り組み方やスケジュールが少し異なっている。多くの国公立大学には(法)文学部があり、その中の一つの学科、専修として英文学がある。愛媛大学を含め、多くの国公立大学には(法)文学部があり、その中に英文学を専攻できる学科やコースがある。1年生のうちは哲学や心理学、国文学や社会学など文学部全体の他学科の授業も受け、興味を持った専攻に2年生から分かれることとなる方式をとっている大学が多い。一方、私立大学では、入学時から学部/学科を選択して大学での学びを始めるため、1年生のうちから英文学を学ぶことができる。どちらが正しいかより、国公立、私立大学で学びのスケジュールが異なることを参考にするとよい。

今回は、イギリスの小説家、ロアルド・ダールの短編「The Butler(執事)」という作品を取り上げて、実際に講義が行われた。100万ポンドという巨万の富を築いたいわゆる「成り上がり」の男性が、ロンドンの街中の邸宅に住まい、執事とシェフを雇って優雅な生活を送るが、本来身分の低い人物であるため食事やワインの本当の価値が分からず執事とシェフに騙される、という物語である。うわべのストーリーだけ読むとなんの面白味もない物語かもしれないが、人物のせりふや行動の端々にイギリスの文化が表れている。物語をただ読むだけでなく、その物語に隠された文化を読み解くことに面白さがある。

 

【生徒の感想】

  • 井上先生の解説がとても分かりやすく、大学でこのような授業を受けてみたいと感じた。
  • 英文学と聞いて堅苦しそうなイメージを持っていたが、物語を読み解き、鑑賞する楽しさを感じた。そのためには食文化や言語、歴史など、様々な教養を身に付ける必要があると思った。
  • 「アカデミックな」視点から物語を読むことが、大学で文学を専攻する意義だと感じた。そこが、単なる読書との違いだと感じた。

 

井上 彰 先生

井上 彰 先生