楽器演奏と海外留学の意義

弦楽器工房 “La chiave di Basso” 弦楽器製作者 西村 啓志 氏 

 

【目的・要旨】

 弦楽器製作の本場イタリアのクレモナへ留学し研鑽を積まれ、現在は地元松山に弦楽器工房を開業された講師の、弦楽器制作に対する情熱や行動力などの生き方を学び、今後の生き方を今一度考えることが目的である。

 弦楽器製作は木材選びから始まる。それぞれのパーツに適した木材があることを教えていただいた。常に響きや音色のことを考えて作られており、表板にf字孔をあけることや、裏板は左右対称になるよう板を2枚合わせているのもそのためだ。また、楽器を補強するため、バスバーを取り付けたり、割れの進行を防ぐため、表板と裏板にはパーフリングという黒い線上の装飾を埋め込んだりしており、細やかな作業を行って合理的に作成されていることも分かった。

 講師は、幼い頃から楽器演奏に親しみ、中学ではチューバやサックスを吹いていた。高校の部活動でコントラバスを担当し、低音で演奏を支えるコントラバスの魅力に夢中になったことから、高校時代にはすでに弦楽器製作に携わりたいことを決めていた。日本の専門学校で弦楽器製作、修理などの勉強をしたが、地元松山で工房を開き独立する技量を身に付けるため、さらに著名なマエストロ、マルコ・ノッリ氏の下で修行するために、単身イタリアに渡った。早速、マルコ・ノッリ氏の門を叩いたが断られ、落ち込む日々が1年間続いた。しかし、ノッリ氏が指揮をする軍楽隊でチューバを担当することになったことがきっかけで、ノッリ氏との信頼関係ができ、ついに弟子入りを許された。ノッリ氏の下で5年間修行した全ての経験や勉強が、現在に繋がっている。2019年12月に帰国し、2020年4月に松山に工房を開き独立した。

 イタリアで言葉が分からなくても楽器を吹くことで、どうにか人と仲良くなることができた。軍楽隊に入れたのもノッリ氏に弟子入りできたのも、楽器の経験があったからだ。楽器の経験がきっかけづくりに生かされたからこそ、皆さんも演奏することをぜひ続けてほしい。海外留学を経験された講師からの言葉に生徒たちも勇気づけられ、向上心を持って努力することの大切さを実感し、自分を見つめ直す良い機会となった。

 

【生徒の感想】

  • 音楽を奏でることができるのは、多くの人の支えがあってこそだと改めて思った。演奏できることや、支えて下さっている人に感謝し、その人たちに応えられるような演奏ができるよう努力し続けていきたい。
  • 楽器に対する熱い思いが伝わってきた。常に向上心を持ち続ける西村さんのお話を伺い、夢中になれるものがあることは幸せなことだから、私もピアノに対してもっと向上心を持ち行動しようと思った。
  • 自分の夢を早くから持ち、それに向かって努力したからこそ成し遂げられたのだと思った。私もなりたいと思うものを見つけた時、後悔しないよう精一杯頑張りたい。
  • 音楽について学び音楽を仕事にするには、とてつもなく長い年月と費用がかかるのだと思った。だからこそ、音楽で一生を過ごすためには、もっと努力して多くのことを身に付けていかなければならないと身に染みて感じた。

 

西村 啓志氏

西村 啓志氏

弦楽器製作の工程について伺う様子