裁判所の仕事と裁判員裁判

講師 松山地方裁判所 判事  高杉 昌希 氏 

 

【目的・要旨】

文系コースの生徒は、法学部や法文学部への進学者も多い。授業において、司法や裁判所について公民で学ぶが、その仕事内容や制度などの詳細は実感をもって考えにくい。そこで、法を司る裁判官をはじめ、裁判所で働く方々の仕事内容を学ぶこと、そして生徒に法律にかかわる職の選択肢の一つとして考えてもらうこと、さらに裁判員制度についても学び、だれもが選ばれる可能性のある裁判員についての心構えなども知ってもらうことという目的でこの講座を実施した。主に刑事裁判を担当し、日本全国各地の裁判所で20年間判事として携わった高杉昌希氏に、裁判所の仕事や裁判員裁判、裁判所で働く人々についての講演をしていただいた。

本講義の前半は,裁判所の仕事について講演していただいた。裁判所とは,法律という社会のルールに従ってトラブルを解決する国の機関であり、5種類の裁判所を設置していることについて説明していただいた。また、裁判所で扱う事件についても、日常生活で起こる法律上の争いを解決する民事裁判、家庭裁判所で扱う夫婦や親子間での争いである家事事件や、非行少年などが対象になる少年事件、刑事裁判に分類される単独事件・合議事件、裁判員裁判についての紹介・説明をしていただいた。

本講義の後半は、裁判員裁判について説明していただいた。裁判員裁判は、私たちに裁判を身近で分かりやすいものにすること、司法に対する国民の信頼を上げることといった目的がある。対象となる事件は、殺人・強盗致死傷・身代金誘拐・放火といった非常に重い事件ばかりである。裁判員選任までから仕事や役割、心掛けることを丁寧に教えてくださり、裁判員制度に理解を深め、刑事裁判に参加することへの不安感や疑問を解消するきっかけになった。また、裁判所で働く人々として、裁判官・裁判所書記官・裁判所事務官・家庭裁判所調査官を紹介していただいた。

終盤の質疑応答では、コロナ下での裁判員に対する配慮、裁判所の判事として心掛けていることなど、丁寧に対応していただいた。生徒一人一人が、裁判所とは何かを考え、法律について真正面から向き合い、今後の学習にも活かしていく大変貴重な良い機会になった。

 

【生徒の感想】

  • 今回の講義で、裁判について知らなかったことをたくさん知ることができたので良かったです。裁判員制度について聞いたことはあるけれど、よくわからないという状態だったので、どんな役割があってどんな事件にかかわるのかということを知って今までよりも身近に裁判のことを感じることができました。
  • 「裁判所は、白か黒かを決めるのではなく、黒か黒でないかを決める場所である」という言葉が印象に残っています。
  • 裁判員に選出される確率が意外と高いことに驚きました。裁判について勉強することや、裁判員の経験は、自分の価値観や、正義感、倫理観を見つめなおす貴重な経験になると思います。
  • 裁判員に選ばれるというのは、非常に責任が生じるものであると改めて思いました。自分の一票で他人の人生が変わるため、もし裁判員に選ばれた場合は、真剣に取り組みたいと思います。

 

高杉 昌希 氏

高杉 昌希 氏

質問をしている様子

質問している様子

( 担当: 齋藤 )