食から世界を探検しよう!

世界の台所探検家 岡根谷 実里 氏 

 

【目的・要旨】

1年5、8,10組の生徒たちは、「世界の台所探検」というテーマに基づいて探究活動を進めており、中間の講評をしていただいた。以下は、その内容である。

夏休みの間に世界各国から各々が選んだ国の料理を作って試食し、それを通しての学び、考察、疑問やその答えとなる情報など、多くのことをレポートに書くことができた。インドネシアのルンダンを調査した生徒はインターネットで複数のレシピを見比べ、それらのレシピの統計をとり、最も多く使われていたスパイスを選んで調理をしており、味や見た目がカレーのようになったことから、インドネシアとインドには何か関係があると仮説を持ち、その仮説を検証する姿勢が素晴らしかった。実際に作ってみたからこそ、その仮説は生まれたのだと思う。フィンランドにサーモン料理が多い理由を調査した生徒は、「なぜ?」という疑問を次から次へと出して調査を進め、サーモンはノルウェーからの輸入量が多いこと、野生魚や漁師不足によってサーモンの輸入量が多くなっていることまで調査ができていた。

「なぜ?」という疑問を深めていくことが探究活動となる。例えば、「ブルガリア」と聞くと何をイメージするだろうか。おそらく、多くの人はヨーグルトを思い浮かべるであろう。実際、ブルガリアには日本とは比較にならないほどの種類のヨーグルトが販売されているが、それはなぜか。ブルガリアが位置するヨーロッパはその冷涼な気候から、暑さを苦手とする乳牛を飼育するのに適した環境となっており、生乳生産量が世界の中でも非常に多い地域として知られている。また、社会主義国でもあったため、生産費があまりかからず、全国民が平等に食べることができる乳製品が重宝された。しかし、重宝されていた乳製品の消費量は1989年から1993年までのたった4年間で半分に減少する。なぜ急激な減少が起こったのか。その大きな原因の1つとして、ソ連崩壊が挙げられる。1989年まで乳牛を一か所に集中させ、組織的に効率よく行われていた生乳生産システムは、ソ連崩壊後に失われ、生産量が減った乳製品はその消費量も大きく減少した。ソ連崩壊という政治的な影響を受けたことで、ブルガリアの人々の食生活は非常に大きな影響を受けたのだ。

ヨーグルトはブルガリアの日常生活において非常に馴染み深い食物である。対して日本では、米に並んで、大豆が多く栽培されており、私たちの生活に馴染み深い。その製品の一つである味噌はヨーグルトと非常に似ている。牛乳とブルガリア菌を合わせて作られるのがヨーグルトで、大豆とこうじ菌を合わせて作られるのが味噌である。ブルガリアでよく食べられているヨーグルトスープと日本で食べられている味噌汁、そのどちらもそれぞれの国で日常的に食べられている発酵食品スープである。また、チーズは牛乳に凝乳剤を入れ、豆腐は大豆ににがりを入れ、固めて作られる非常に身近な食品である。

料理は世界を知る窓であり、料理について知ることでその料理を食べている人々の暮らしやその地方の地理、歴史などが見えてくる。また、料理について知ることは、世界と一歩近くなることでもある。全くかけ離れた料理だと思っていたヨーグルトと味噌、チーズと豆腐には意外な共通点がある。料理について学び、「なぜ?」と疑問を抱き、自身の探究を深めていってほしい。

 

【生徒の感想】

  • 今回の講座で自分の調査国の歴史や地理を調べたり、以外の国の料理も調べたりしたいと思った。
  • なぜその食物がその国で食されているのか、名前の由来やいつ食べられるかなど、自分の仮説を立てながら調べていきたい。

 

ブルガリアでヨーグルトが多く食される理由を説明する岡根谷氏

ブルガリアでヨーグルトが多く食される理由を説明する岡根谷氏