『Flying Girl』プロジェクト

校長 永井康博

 今年の3月下旬、南海放送の江刺伯洋アナウンサーから、「Flying Girlプロジェクト」なるものを立ち上げるとの話がありました。宮内営業部長さんとともに来校され、「大正時代、日本で最初に航空操縦士免許を取得した女性が愛媛にいた。済美高等女学校の卒業生、兵頭精(ただし)さん。男だらけの世界で奮闘し、見事その夢を叶えた。彼女が免許を取ってから、ちょうど100年。ジェンダーの壁を突き破った空のジャンヌダルクを、我々は絶対に忘れてはならない。そのためにも、彼女を主人公にしたラジオドラマをまずは作成したい。そして、そのドラマを朗読ミュージカルに再編成し、県内各地で公演したい。」と熱く語られました。
 江刺アナの熱心な思いに圧倒され、済美高校としてこのプロジェクトへ全面的に協力することを、二つ返事で約束しました。
 そして、完成したラジオドラマが5月22日に放送され、大きな反響を呼んでいます。私も拝聴しましたが、一部フィクションやユーモアも交えたすばらしい作品に仕上がっていて感動しました。
 
 兵頭精(ただし)さんは、明治32(1899)年、北宇和郡東仲村(現在の鬼北町)に生まれました。幼い頃より優秀で、地元の高等小学校を卒業後、済美高等女学校3年に編入学し、大正4(1915)年3月に卒業しています。鉄道もなかった大正時代の初期に鬼北町から松山の学校に進学するということは大変なことだったと思います。
 亡父の影響もあって、在学中からパイロットを志していたようです。その後上京し、津田沼(千葉県)にあった飛行学校で学びます。教官も学生もほとんどが男性の中で訓練を受け、墜落事故や海上への不時着などもありましたが、挫けず努力し、大正11(1922)年、女性として初めて操縦士免許状を取得しています。第二次世界大戦前に、日本人女性で飛行士となった方は、僅か27名です。
 なお、昭和51(1976)年に放送されたNHKの朝の連続ドラマ「雲のじゅうたん」の主人公のモデルにもなっています。このドラマは浅茅陽子さんがヒロインを演じ、平均視聴率が40%という大好評を得ています。
 
 今後、「朗読ミュージカル」が完成した際には、本校生徒の前でも演じていただく計画も進行中です。
 このプロジェクトを立ち上げられた南海放送様、ならびにこの企画に賛同し、ご協力・ご支援いただいている本校同窓会に心よりお礼申し上げます。

兵頭 精さん

南海放送:江刺伯洋アナウンサー

2022年05月31日