第38回愛媛県高等学校総合文化祭 美術・工芸部門

〔優秀賞〕
美術科2年 田頭 花唯(椿中学校出身)日本画専攻
「出発点」 50号(91×116.7㎝)

 この作品の着想は幼少の頃、とべ動物園の写生大会に参加し経験したことを素にしています。そこで出会ったペンギンは、光が柔らかく降り注ぐ水の中をまるで自由に空を飛ぶかのように悠々と泳いでいました。まるで大空を駆け巡るペンギンの様子を、色とりどりに描く楽しさを味わいました。そして自分の感じた想いが絵を見る人に伝わった時、表現の面白さを実感した最初の体験となりました。
 初めての大作を制作するにあたり、大空を飛行するペンギンとこれから絵筆で世界を拡げていく自分自身を重ね合わせ、表現の出発点としました。今までの自分を振り返り、初心に戻り丁寧に色彩を重ねることができたと思います。
 

〔奨励賞〕
美術科2年 藤村 梨世(鴨川中学校出身)洋画専攻
「見上げた想い」 50号(91×116.7㎝)

 この作品は、中学生までの自分を振り返る中で気づくことができた「想い」を題材にしています。中学生までの私は、クラスメイトと本音で話すことが苦手でした。あの頃の私は伝えるという行為が怖くて、自分の気持ちを曖昧にしていました。そのため自分の気持ちが学校にはない気がしていました。けれど高校で絵を描いているうちに、絵に「想い」があるように、私の言葉にも心にも何かしらの「想い」があり、自分なりの言葉で伝えていたんだと気がつきました。画面上から降る沢山の絵はその自分の気づいた「想い」を表し、それを見上げている私を描きました。手に持っている空洞の額縁は、自己を省みることがなかった過去の自分には何もないという気持ちを表しています。作品の構想を練るために自分自身と向き合い、気づいた「想い」は、私に多くのことを教え、成長させてくれるきっかけになったと思います。

〔選考委員賞〕
美術科2年 阿部 泰士(今治西中学校出身)デザイン専攻
「Hope & Oblivion」 B1(103×72.8㎝)

 この作品のテーマは、「希望と忘却」です。着想のきっかけは、私の地元にある人通りの少ない寂れた裏路地を見つけたことです。見つけた瞬間に、その雰囲気に魅了され、やがて存在するものはいつか消えて忘れられるのかな、と想像しました。
 まず、画面中央に階段を置き、果てしない孤独を表現しました。また右側を全体的に寒色系にすることで、人々の記憶がうすれ、誰も立ち寄らなくなっていったというストーリーを表しています。一方左側は人々の活気あふれる暮らしを感じるように、全体的に暖色系で展開しています。それぞれの世界の対比を強調するために、補色的な色相を使って描きました。今回の制作の大きな課題は、裏路地を見てわきあがった感情をどう作品に落とし込むか、でした。試行錯誤の中、何度も自分に問いかけ整理し、色彩のイメージに置き換えながら多くを学び得ることができました。
 
2025年01月14日