◆日本画部門〔美術会大賞〕
美術科2年 菅 有廣 (椿中学校出身)
「音」

 画面中央に描いたギターは、父の友人から譲り受けたものです。私はこのギターでJAZZやJ-POPを練習しています。ギターを弾いているとその音色は人が発する声の様に聴こえてきて、音が感情を持っているように感じるようになりました。音は物体の振動によって生まれ、その音色は一つひとつ違い個性があります。これらのことから目に見えない音に感情があるならどのような色彩だろうか、という疑問と向き合いながら制作することにしました。ギターのボディは様々な音色が感じられるように明るい色彩を多用し、6本の弦は凛とした張りを表現するために白一色に統一することで対比の効果を意識しました。半年間かけて制作してきた作品でしたので、今回の受賞はこれからの表現活動への自信となり、とても嬉しく思います。

◆洋画部門〔村上巌記念賞〕
美術科2年 米田 銀河 (今治東中等教育校出身)
「磯河内の昼」

 この景色は、松山市北条の宇佐八幡神社からの眺めを描いたものです。北条の町全体を見渡すことができる広がりに魅力を感じ、前景、後景の明暗のコントラストの差を意識して描きました。また、木や地面をじっくりと観察して、様々な色が微妙に混ざり合っていることに気付き、その色の変化を新鮮に感じながら制作を進めました。
制作中はイメージに合った描き方を見つけるために、色々と試してみました。すぐに思い通りにはいきませんでしたが、印象派の画家たちの作品を参考にしながら、最後には自分の納得のいく描き方を見つけることができました。

◆洋画部門〔特選〕
美術科3年 木村 恋菜 (城北中学校出身)
「夕刻のメロディーチャイムが鳴る」

 この作品は、朧気で懐かしい雰囲気が感じられる幼少期の記憶を絵画に表しました。
タイトルにあるメロディーチャイムは毎日決まった時間に放送されるスピーカー点検のための音楽で、実際の情景を想像しやすくなるように、時間と音の情報を取り入れました。私の幼少期はこのチャイムが放課後一緒に遊ぶ友達との解散の合図でした。薄暗くなってきた中、ひとり自宅に帰る時のもの寂しさを今でも懐かしく思います。この寂しさを、遠くを物憂げな表情で見つめる犬に重ねました。そして、全体的に青を基調とし、夕暮れ時のうすら寒いような印象を受ける画面に仕上げることにしました。この絵を見た人にあの頃の雰囲気を感じてもらえるようすべての要素で表現を追究することができたと感じています。最後まで粘り強く工夫を凝らし、納得のいく作品を完成させることができました。

◆洋画部門〔特選〕
美術科2年 能田 響夏 (鴨川中学校出身)
「ぐるぐるまわる」

 この作品は、子どもの純粋な好奇心と想像力の広がりを表現しています。中央の人物は幼少期の私自身で、指で目元を囲む仕草には、「自分だけの視点で世界を観る」という意味を込めました。背景に描いた恐竜やジンベイザメ、身近な動物たちを通じて、現実と空想が交差する子どもならではの感覚を表しました。
題名の「ぐるぐるまわる」は、考えを巡らせるたびに、想像の中で動物たちが自分の周りを回り続ける感覚を表現しています。私自身の過去の記憶や感情を描くとともに、見る人に子どもの目を通して世界を見る楽しさや、大人になるにつれて忘れかけていく好奇心を思い出してもらいたいという想いで制作しました。

◆洋画部門〔推奨〕
美術科2年 門岡 春花 (今治南中学校出身)
「陽だまり」

 この子犬は、私が飼っている犬と近所で飼われている犬との間に生まれ、私にとって家族と同じくらい大切な存在です。大好きという愛情と健康ですくすくと育ってほしいという願いを込めて描きました。
子犬が木漏れ日の中、芝生の上で寝ているというシンプルな画面構成なため、芝生の緑や毛の茶色の中に多くの色彩を施し、温かみのある作品になるように工夫しました。初めての50号(91×116.7㎝)作品で、描いたり修正したりの繰り返しで手探りすることが多く大変なこともありました。しかし、この作品制作を通じて多く学ぶことができました。そして県展への初挑戦で推奨を頂くこともでき、日々、私を支えて下さっている方々のおかげだと思っています。今後も感謝の気持ちを忘れずに制作活動に励みたいと思います。
2024年12月19日