「出陣学徒壮行の地」の石碑
校長 永井康博
ウィンターカップでの本校バスケットボール部の活躍については、先月の「校長便り」に記しましたが、2回戦の試合会場となった東京体育館の隣に国立競技場があります。
国立競技場は、周辺の自然との調和を目指して隈研吾氏が設計した、鉄骨と木材のハイブリット構造となっているすばらしいスタジアムでした。試合開始時刻より早く到着したため、熱戦が繰り広げられた「2020東京オリンピック・パラリンピック」を思い出しながらその外周を歩いてみました。その途中に「出陣学徒壮行の地」の石碑が目に留まりました。1993年(平成5年)に学徒出陣50周年を記念して、出陣学徒の有志の方々によって建立されたものでした。
学徒出陣(動員)とは、太平洋戦争終盤の1943年(昭和18年)に兵力不足を補うため、高等教育機関(旧制の大学・高等学校・専門学校など)に在学中の学生を徴兵し、戦地に送り込んだことを指します。10月1日に当時の東条内閣が決定し、3ヶ月後に入隊することになりました。そして、入隊に先立つ10月21日、明治神宮外苑競技場(現在の国立競技場)で文部省主催による「出陣学徒壮行会」が行われました。
私は、太平洋戦争を扱ったテレビ番組などでよく放映されるシーンを思い起こしました。学生がそれぞれの母校の校旗を先頭に、行進曲に合わせ、雨でぬかるむトラックを小銃を担いで進む姿や、壮行会に強制的に動員されたであろう大観衆の姿です。
今から約80年前の悲しい出来事です。約10万人の学生が志半ばで学び舎を追われ戦地に送り出された場所に建てられた石碑に、私は静かに手を合わせました。
石碑に記された銘文の一部を紹介します。
学業半ばにして陸に海に空に、征って還らなかった友の胸中を思い、生き残った我ら一同ここに「出陣学徒壮行の地」由来を記して、次代を担う内外の若き世代にこの歴史的事実を伝え、永遠の平和を祈念するものである。